書籍

2008年6月10日 (火)

アナログな絵本がいいねぇ

紀伊国屋書店の売れ筋コーナーに積まれていた絵本。思わず買ってしまいました。

Gallop!

Gallop!

  • 作者: Rufus Butler Seder
  • 出版社/メーカー: Workman Pub Co (J)
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: ハードカバー

内容は『スリットを動かしながら楽しむアニメ』の絵本。子供のころ読んでいた雑誌(小学3年生とかね)の付録でよく付いていたことがあり、ご記憶のある方もいらっしゃると思いますが、この絵本の場合はそれがさらに高度になってアニメが緻密になっています。

でも、緻密なアニメといってもほとんどが動物の歩く、走る、跳ねる、飛ぶなどの行動のみ。しかし、なぜか見ていて飽きません。長年のデジタル漬けの生活の反動でしょうか? こういうアナログでシンプルなものが非常に新鮮に感じてしまいます。そうそう、この絵本も。ジョン・レノン・ミュージアムで買いました。

リアル・ラヴ―ショーンのために描いた絵

リアル・ラヴ―ショーンのために描いた絵

  • 作者: ジョン レノン
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 単行本

2008年5月18日 (日)

『オタクはすでに死んでいる』を読んだ

『オタキング』というより、今はダイエット本で有名になった岡田斗司夫氏の新作『オタクはすでに死んでいる』と、1996年に出版され、最近新たに文庫化された『オタク学入門』を読みました。

オタクはすでに死んでいる (新潮新書 258)

オタクはすでに死んでいる (新潮新書 258)

  • 作者: 岡田斗司夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/04/15
  • メディア: 新書

オタク学入門 (新潮文庫 (お-71-1)) (新潮文庫 (お-71-1))

オタク学入門 (新潮文庫 (お-71-1)) (新潮文庫 (お-71-1))

  • 作者: 岡田斗司夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/04/25
  • メディア: 文庫

 で、感想…… (注:感想です。評論ではありません)

まず、驚いたのは1996年、つまり今から10年以上前に出版された『オタク学入門』が、今読んでもちっとも色褪せてないことでした。おもしろい。さすがに10年前の本なので取り上げられている題材が古く感じられるのは否めませんが、それでもおもしろく感じられるのは、岡田氏の『洞察力、情報収集力、分析力、そして彼独自の理論のおもしろさ』 によるところが大きいのでしょう。立派なサブカル……いや、よくできたオタクカルチャーの本です。

で、最新作の『オタクはすでに死んでいる』も読んでみましたが、私には、この本が岡田氏の今の『萌え~を合言葉にするオタク達』に対する『愛情溢れるやわらかな説教本』に感じられました。あくまで私にはね。『きみたち。オタクがやっと市民権を得、せっかくオタク学という今までにない”おもしろい文化”が進化し始めようとしているのに、そして、世界中の人々も興味を持ち始めているというのに、それらをただの消費とアイデンティティーの道具にするのは、もったいないんじゃない?』てな感じで。

そうそう、読んでいて、ふと20年前を思い出しました。私がエニックス(現:スクエニ)で働いていた頃です。当時のエニックスには、岡田氏のいうところの第2世代のオタクな若者達がフリーの作家として出入りしていました。当時の私はオタクという種族は始めてだったので(なにせ田舎出身なもんで)、彼らが熱く語るゲーム、マンガ、アニメ、映画、小説の話の『濃さ』に驚き、なみなみならぬ興味をもちました。全員とは言いませんが、彼らの話はマンガやアニメにとどまらず、歴史、社会風俗、政治の話にまで飛躍していました。て、ゆーか、そういう話に抜きには『濃い話』にはならなかった、というのが正確なところでしょうか。で、そういうのもあってか、当時のオタクに対する私の印象は、社会や権威的なメインカルチャーが相手にしなかったマンガ、アニメ、ゲームの自己流評論家、啓蒙家、そして活動家(同人、イベントの)というものでした。(まぁ、クサイ、服装センスが悪いというのはおいといて(苦笑))

で、昨今のオタクについてですが……

現在私はあるゲーム学校で講師をやっていてもう5年目になりますが、年々、オタクと自称する学生の雰囲気が変化してきているのを実感しますね。評論家っぽいオタクは相変わらずいますが、その評論がアニメ、ゲームの中で完結することが多く、私がそれらに関連する社会現象や歴史の話をふると、一応、話すには話しますが意外と無知な部分があったり、黙り込んでしまうということが目立ちます。言い換えれば、感想は言えるのですが、分析、評論ができないというのでしょうか。あと、(これはどこの世界にもいますが)オタク学生が好きな作品を他の生徒に否定されると、まるで自分の人格を否定されたように激怒する者も増えてきたような気がします。

岡田氏の『オタクはすでに死んでいる』は、各方面?で賛否両論が繰り広げられているようですが、私はどちらかというと彼の論理には賛成で、『たしかにあの頃のオタクは、今の若者の中に少なくなったな……』という印象を否めません。もちろん、それは悪いとか良いとかという意味ではなく、『オタク』という社会現象が文化の一部として確実に認められ、そしてそれが今も変化し続けている『生きている文化として素直に肯定できる事実』という意味でということです。

蛇足ながら、昨今、思うにインターネットが世の中の人々をプロ、アマ問わず総評論家化させているような気がします。もし、死んでしまったオタクのハート(自己流評論家としての)がこれからも生き続けてゆくのなら、これからはマスコミに相手にされない埋もれた、もしくは葬られたサブ情報自体に対する評論家(情報オタク)に受け継がれてゆくような気がします。 まぁ、まったく論理性のない妄想ですがね……(苦笑)。

2007年7月18日 (水)

ゲームに押されテレビ視聴率が低下?

ゲームに押されテレビ視聴率が低下
『英国ニュースダイジェスト』1105号(7月19日発行)
7月の第1週、日本のテレビ業界に大きな衝撃が走った。なんと1週間の間に放送された番組の中で、ゴールデン・タイムに視聴率9%を超えたものが1つもなかったのだという。業界関係者らは、これを任天堂の人気家庭用ゲーム機Wiiの影響によるものと分析している。

フジテレビの専務取締役は「日本のテレビ視聴率は常に上下しやすいが、このように著しい低下はあまり経験がない。テレビそのものに問題があるというよりは、Wiiなどの外的な要素に左右されている可能性が高い」と話す。親達は、ゴールデン・タイムにテレビを見るより、子供達と一緒にゲームを楽しみたいと考えているのかもしれない

――てな、ニュースがあったそうな。 んなアホな……。(胡散臭い)

仮にほんとだとしたら、やめてほしいですなぁ……。こんな幼稚な株主への言い訳は……フジの専務さん。だって、Wiiが原因だったら、既に去年から視聴率になんらかの影響がでているはず。あとWiiの販売台数は国内ではまだ300万台に満たないんですよ。稼働率も100%はありえないし、ましてやウイークデイのゴールデンタイムの食事どきに家族そろってゲームなんかやらないっちゅ~の。つまり、視聴率を下げまくるほど影響力はありませんぜ。それより、よっぽどファミコン時代の方が視聴率に影響を与えた可能性があったはずなのに、そういう報告が過去になかったのは何故? あと、7月の1週だけというのもミョウな話ではあるし……。
まぁ、すべてがWiiのせいだとはおっしゃってないようですが、いずれにしても『根拠のない分析』に限りなく近いようで……。

原因は、 『テレビ番組、そのものにある』もしくは『視聴率の集計ミス』とみたほうが合理的だと思われます。

 

【追記】7月15日現在で300万台突破したそうな。

2007年7月10日 (火)

『旧怪談(ふるいかいだん)』を読んだ

書店に寄ったら京極夏彦氏の新刊が平積みになっていたので手にとってみた。
 
旧怪談
作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2007/07/03
  • メディア: 単行本

パラパラと中を見てみると、なんか京極氏にしては珍しく内容が平易だ。それもめちゃくちゃ分かり易い文体っぽい(ルビまでついてるし)。 新機軸か? いつもはその量と密度で氏の本を読む戦意を喪失させられている私にとっては『こりゃ、気軽でいいや!』ということで、躊躇わず即、購入。

で、感想――

いや、分かりやすくておもしろかったが……。

内容だが、江戸時代に根岸鎮衛(やすもり)という旗本が30年にわたって書き綴った『耳嚢(みみぶくろ)』という備忘録の中から京極氏がセレクトしたものを現代風な表現でアレンジしたもの。まぁ、平たく言えば『怪談』集だ。

それにしても、ちょっと分かりやす過ぎるので調べてみたら、この本、実は『児童書』だったそうな。こりゃまた、なんと質の高い児童向け怪談であることよ。いやぁ、うらやましいねぇ、最近の児童は。こういう本が読めて。恵まれてますよ。あたしがガキの頃は『怪談』というば小泉八雲ばかりでしたよ。

 

2007年6月24日 (日)

とんでも系『幕末維新の暗号』を読んだ

この『フルベッキ写真』と呼ばれる古い写真は、以前、雑誌かなんかに取り上げられ、本物の西郷隆盛が写っているとかいないとかで評判になり、私も興味津々状態になったことがあった。その写真をテーマにしたミステリー?小説ということで、思わず購入してしまった。
(なんでも、坂本龍馬、西郷隆盛、高杉晋作、岩倉具視、大久保利通、中岡慎太郎、伊藤博文、明治天皇などが写っているという。巷のUFOやUMA、心霊写真なんかぶっ飛びます)

幕末 維新の暗号

幕末 維新の暗号

  • 作者: 加治 将一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2007/04/21
  • メディア: 単行本

 

 

で、感想―― (ちょい辛口)

『ダビンチ・コード』のできそこないのような内容でした……。

フルベッキ写真に関する謎解き展開は一見論理的な感じがするが、かなり強引で俗にいう『とんでも系』。ミステリーっぽい物語展開もおせじにも出来がいいとは言えない。ただ、私の場合、こういう事実のようなフィクションのような、その狭間で遊ぶような胡散臭い『とんでも系』創作は、なんかマンガみたいでそこそこ楽しめることができたが……。

物語の内容はネタバレになるので割愛するが、いずれにしてもそのオチは見事な『とんでも系』である。それも世が世なら『不敬罪』でとっ捕まりそうなものである。まぁ、さっきから『とんでも系』『とんでも系』とちゃかしているが、仮に一万歩譲ってこの本を味方するなら、歴史というものは時の権力者に都合良く書き換えられる権力者のための記録のようなものだから、この本のオチのような事実が100%なかった!とは必ずしも言い切れないかもしれない。でも、だからといって、それを正当化するために思い込みの論理展開を使うのはあまりに稚拙で、せっかくの面白い題材も台無しにしてしまっている。まぁ、そこが『とんでも系』が『とんでも系』たる所以でもあるんだけどね……。

以上です。

 


こういう写真はUFO写真みたいに胡散臭いところに存在意義があるのかもね。真偽は二の次でいい。それにしても似てるなぁ~、大久保利通は。(西郷も、っぽいなぁ)

2007年6月 9日 (土)

新書をあれこれ

先日読んだ池谷裕二の『進化しすぎた脳』がムチャおもしろく、それがトリガーになったかどうかは分からぬが、先週から知識・ノンフィクション系の新書ばかり読んでいる。

記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方

記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方

  • 作者: 池谷 裕二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 単行本

タイトルや、帯びの解説はまるで受験生向けのHowTo本みたいだが、内容は『記憶のメカニズム』をアカデミックに、かつ、とてもわかり易く解説したもの。『シナプスの可塑性』が記憶の秘密だそうです。まるでフラッシュROMのようです。

感動をつくれますか?

感動をつくれますか?

  • 作者: 久石 譲
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 新書

宮崎アニメでお馴染みの作曲家、久石譲氏によるプロクリエイターを目指す人々向けの『作品づくりの心構え』みたいな本。可もなく不可もない内容。正直、たいくつ。(別に久石氏じゃなくてもいいじゃん…てな感じ)

裁判官の爆笑お言葉集

裁判官の爆笑お言葉集

  • 作者: 長嶺 超輝
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 新書

なんか奇を衒ったタイトルだが、内容は裁判における、本来なら控えるべき裁判官の『一言』を紹介したもの。裁判官が被告人と出会うのもひとつの縁。その被告人に対して裁判官が『ひとりの人間として言いたかった言葉』を集めたヒューマニズム溢れるものになっている。『刑の量刑相場』っていうものがあるということが勉強になりました。

企画書は1行

企画書は1行

  • 作者: 野地 秩嘉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/06/16
  • メディア: 新書

ゲームプランナーでもある私としては気になったタイトルだったので読んでみた。内容は各業種で成功を収めた人々が、どのような企画書を作ったか? を紹介するエピソード集。企画は『本質を見抜いたコンセプトが命』ということをあらためて認識させられた。プランナーは必読?

官僚とメディア

官僚とメディア

  • 作者: 魚住 昭
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 新書

共同通信社入社後、司法記者としてリクルート事件を取材し、現在はフリージャーナリストとなった著者による官僚とメディアの凄まじい癒着と腐敗をえぐりだしたノンフィクション。このテの本は読んでいて、ため息、怒り、失望、それらがまぜこぜになったなんとも言えない無常観や脱力感が得られます。だからといって安直に厭世的になってはいけません。常に世に目を向け、現実に対する正義感と希望をもち続けることが大切なのです。……な~んてね。

 
さて、これらの本を買った後に気づいたのだが、これらも含めて昨今の新書にまかれている内容宣伝用の帯(腹巻?)の煽り文句がちょっと的外れのものが多く、正直、鬱陶しい。もともと売れない地味なジャンルばかりなので、せめて購買意欲をそそるような煽り文句を使って一冊でも多く売ろうという気持ちはわからないでもないが、内容を勘違いしたくないので、もっと正確に煽ってくれると助かる。

2007年5月26日 (土)

『進化しすぎた脳』を読んだ

東大の薬学博士、池谷裕二氏の『進化しすぎた脳』を読んだ。

進化しすぎた脳

進化しすぎた脳

  • 作者: 池谷 裕二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: 新書

で、感想――

 

いやぁ~、面白かった! 面白いといっても、この本、小説ではなく、講談社のブルーバックスという科学を紹介する本だ。

 

まず、副題の『中高生と語る大脳生理学の最前線』でもわかるように、『講師が生徒に語りかける』という形式で書かれているので、文体が平易で内容が非常にわかりやすい。あと、書かれている大脳の関する最新知識も”目からうろこ”のものが多く、読み続ける度に『へぇ~!』と思わず感嘆の声をあげてしまった。大脳に感する本に、本物の私の大脳が感心しているというのもおかしな話しだが。

 

そのような興味あふれる知識の中で、特に”目からうろこ”だったのは――

 

・脳が体をコントロールしているのではなく、体が主体的に脳をコントロールしている。

・人間の論理的思考は言葉という抽象概念ができたから。その抽象概念は脳が生み出したのではなく、咽頭が声を発生できたから。

・人間の目の画素はたったの1メガ。でも、世の中のすべてが鮮明に見えるのはほとんどが脳の補完。

・悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい……つまり、喜怒哀楽等の心(クオリア)は脳内では最後の作業。

・人間の記憶はあいまいだからこそ、意味がある。

・ひとつの結論をだすのに通過する脳の神経細胞は、たったの100ステップ。

 

……など、目からうろこが出っ放し。茂木健一郎氏の本も面白かったが、こちらも科学の面白さを伝えることでは茂木さんには負けていない。

 

しかし、脳って、ほんっとに、面白い物体だなぁ……。

2006年12月16日 (土)

人の心を描くこと

なんか映画化もされ、今上映されているようですね。『手紙』

手紙

手紙

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫

で、感想――

う~ん……。良い作品だとは思うけど、重松清の『疾走』を読んだ後だったので、なんか『魂を揺さぶられる』ほど感動できなかったなぁ…。多分に『疾走』が強烈すぎたせいかもしれないが、『手紙』はシチュエーションは感動できるんだけど、殺人を犯した兄と、そのせいで悲惨な人生を歩むことになった主人公の弟の『心のひだ』ってゆーか、ドロドロした心の粘液ってゆーか、なんかそんなものがグッと伝わってこなかった。最後のシーンも『涙でページを濡らすのか?』と期待したけど、なんか(私には)期待はずれだった。いや、もちろん良い作品なんだけどね。

で、なんか消化不良になったので、また読んでみた。重松を。

流星ワゴン

流星ワゴン

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/02
  • メディア: 文庫

で、感想――

いいねぇ……。読んでいて登場人物達の『心』がかたちとなって文面から飛び出て来るんだよなぁ。設定は『疾走』とうって変わってファンタジー色?の強いものだが、もちろん彼の作品なのでご都合主義に逃げることなく、しっかりとリアルを描いている。

物語は、家庭を崩壊させ生きる望みを失った37歳の真面目な主人公が、交通事故で死んだ父子の幽霊の力で過去に戻され、何故か主人公と同じ年齢の父親と出会う。現世界で確執している二人は、その不思議な交流をとおして親子の絆を確かめてゆく。同時に主人公は妻と息子との過去の関係も修復し未来を変えようと努力するが、悲しいかな未来は変えられない。それは彼の父親との関係も同じ。しかし、いつしか主人公は『自分が背負った過去を認める』ことで、もう一度人生をやり直そうとしてゆく……。ってな感じ。

子を持つ親には涙もんです。

相性がいいというのかな? 重松氏の作品は妙に私の心に響く。彼は人の心を描く為に最善の言葉を慎重に探している気がする。まぁ、人によっては「ねちっこく、ジメジメ」した感じがするかもしれないが、そもそも人の心って取り留めもなく「ねちっこく、ジメジメ」したもんだから正直でいいんじゃない?

(追記:ただ、重松氏のやたらと力の入った性描写はちょっと……。)

隠し剣秋風抄

隠し剣秋風抄

  • 作者: 藤沢 周平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 文庫

で、今読んでるのがこれ。藤沢周平のこのシリーズは山田洋二監督の映画「たそがれ清兵衛」や、今キムタクでやってる「武士の一分」の原作として有名だ。最近リアルな現代ものばかり読んでちょっと疲れたので、気分を変えて時代物でも…と思って読み始めた。

で、感想――

時代もの…ってゆーか、武士ものっていいねぇ! なんか「凛」とさせられます。「OH! サムライ イズ ジャパン!」ってな感じ。今夏から某ゲーム会社に通うようになり、久しぶりに通勤列車に揺られる日々を送っているが、くたびれきった乗車客達の面(自分も含め)を毎日見ざるを得ない状況では、この手の本は良き活力剤になりまする。

2006年11月23日 (木)

遅ればせながら『疾走』を読んだ

以前から気になっていた小説だったが、まぁ、そのうちに読むか――と思っている間に映画化もされDVDにもなり、文庫本にもなってしまったので超遅ればせながら読んでみた。(最近こればっかW)

疾走 上

疾走 上

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫
疾走 下

疾走 下

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫

 

(なんかキングクリムゾンのような表紙イラストだなぁ……)

で、感想――

私は小説を読んで泣くということはあまりないのだが、この作品の最後のページで心が震え不覚にも涙がハラハラと流れ、しばしの間それを止めることができなかった。久々に魂が震えた作品だった。(嗚呼、もっと早く読んどけばよかったなぁ……)

あらすじだが――(以下、文庫本の解説文引用)

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮らすシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい・・・。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走り続けた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける――と、いうもの。

この作品を読む前に作者の重松清氏の直木賞受賞作品『ビタミンF』を読んでみたが、この作家はとにかくその筆力もさることながら、日常を生きる普通の人々の心の陰影や揺れをリアルに繊細に描くことが秀逸だ。ビタミンFは親の目からみた家族の心の在りようと絆を描いたものだったが、『疾走』は崩壊した家族の犠牲となった孤独な少年のあまりに過酷な運命をビタミンFと同じ秀逸な筆力パワーで描くので読んでいてかなりヘビーだ。

しかし、そのヘビーさは『ただ重い』だけのヘビーさではない。『あなたは”ひとり”ということがどういうことなのか、考えたことがありますか?』という作者の感性の刃のような『問い』を常に突きつけられているようなヘビーさだ。『孤独』でもない、『孤立』でもない、『孤高』でもない――『ひとり』。 ――だれにも繋がることができない『ひとり』というものを。

私はこの物語を読み終えた後、何故か主人公のシュウジとキリストがダブってしまった。キリストがこの世の人々の罪をすべて背負って十字架にかけられ人々を救ったように、シュウジは彼が出会う人々が背負った『ひとり』をすべて背負い、そして**され、そして人々を救ったのではないかと。

この作品には聖書の引用が多い。聖書には『救い』を求める人々にあてた『言葉』がちりばめられている。シュウジは究極の『ひとり』にさらされ一度『言葉』を否定した。しかし、彼は結果的にそのあまりにも過酷な運命を通して『救い』を理解したのではないか?と、思ったりもした。

昨今、マスコミは『いじめ』による自殺の問題を多くとりあげているようだが、それらに関する偉い方々のどのコメントを聞いても、歯の浮くようなシラジラしさしか感じられない。私は『いじめ』の問題は今後も絶対なくならないだろうと思っている。何故なら『いじめ』は教育の構造的な問題ではなく、あくまで人間ひとりひとりが持つ『心の闇の問題』だと思っているからだ。この世の中、学校に限らず家庭内だろうが、会社だろうが、地域だろうが、国家間だろうが、どこかで『いじめ』という心の闇が形になっている。もし、その闇の形が減る、いや、人々が心の闇から救われる可能性が少しでもあるとしたら、たぶんそれは、この作品のシュウジのような人々の『心の闇』を背負ってくれる人間が現れる…いや、人知れず犠牲になってくれる人間が現れたときなのかもなぁ――と、小説を読んで思った。

ふ~……。しかし、思うに、人間って常に何かを背負って生きねばならないようになっているんだろうなぁ……。まるで、ゴルゴダの丘に向かって十字架をかついで歩くキリストのように。(ベタな例えですんません)

2006年11月15日 (水)

『佐賀のがばいばあちゃん』を読んだ

以前から興味があったのだが、まぁ、そのうちに読むか…と思っているうちに、いつの間にか文庫本3部作になって売られていたので超遅ればせながら購読してみた。

佐賀のがばいばあちゃん

佐賀のがばいばあちゃん

  • 作者: 島田 洋七
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫
がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい!

がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい!

  • 作者: 島田 洋七
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 文庫
がばいばあちゃんの幸せのトランク

がばいばあちゃんの幸せのトランク

  • 作者: 島田 洋七
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 文庫

2作目の「笑顔で生きんしゃい」は「佐賀のがばいばあちゃん」の続編、3作目の「幸せのトランク」は作者の青春時代の回想録に「がばいばあちゃん」のエピソードを絡ませたものだ。

で、感想―― 

1作目の「佐賀のがばいばあちゃん」に関しての感想だが、いやぁ、おもしろかった! そして、そのあまりのポジティブ貧乏ぶりに読んでいて心が明るく元気になった。――と、同時に私が子供の頃の祖母とあまりにもその生き方がそっくりだったので、なんか懐かしく、せつなくもなった。(ちなみに私の祖母は去年他界しました。この本のがばいばあちゃんと同じ享年91歳でした)

この作品は80年代初頭の漫才ブームで「B&B」というコンビでダントツの人気を得ていた漫才師「島田洋七」の祖母にまつわる回想録である。「がばい」とは佐賀の方言で「すごい」という意味とのこと。なにがすごいのかというと、その生き様である。戦後の物がない時代に夫に先立たれ、女で一つで七人の子供達を育て、そして驚くほどのポジティブシンキングで貧乏も苦境も乗り越えていったという、そのパワフルさは読んでいて爽快だ。

がばいばちゃんも言っているが、貧乏には「明るい貧乏」と「暗い貧乏」があるという。私も、そう思う。貧しいなりにも知恵と笑いと前向きな考えで明るく生きてゆくのが「明るい貧乏」。その逆で貧乏であることが、あたかもダメな人生と認めるかのごとく後ろ向きな考えをもってしまい心まで貧しくなるのが「暗い貧乏」だと思う。要は幸せというものは「金」だけではなく、「心の持ちよう」だという、しごくあたりまえなことだが、すぐ忘れてしまう大切なことをこの本は楽しく伝えてくれる。

がばいばあちゃんのエピソードを読みながら、亡くなった祖母のことを思い出した。私の祖母も本のがばいばあちゃんのように明るい貧乏だった。女手ひとつで子供を育て、川の横にあった小屋を改造して住居にし、フロも自分で作り、田畑を作って自給自足のような生活をしていた。私は子供の頃、よく祖母の所へ遊びに行き、そのたびに祖母の技や知恵を見るにつけ「ばあちゃんはすごいなぁ…」と感心していたことを記憶している。私の祖母も島田洋七のがばいばあちゃんに負けないくらいに、けっこう「がばく」明るかった。そんな祖母の影響かどうかはわからないが、私は「貧乏人」に対しては悪いイメージはもってないし、逆に金持ちが偉いというイメージももっていない。もちろん金はたくさんあるにこしたことはないが、金がなくても心が豊かだったら、けっこう人生楽しくやってゆけるということを祖母から知らず知らずの間に教えてもらっていたもかもしれない。(でも、実際は教えに反して金がないとクヨクヨしています……)

良い本です。そして愛に溢れています。

こういう本を多くの子供達に読ませるべきだと思う。お子様のいらっしゃる親御さん、お奨めでっせ!

そうそう、この本で書かれてあった、がばいばあちゃんの語録が最高なので、ここに引用しておきます。ヘタな啓蒙書より説得力あります。

詳しくは、佐賀のがばいばあちゃんのサイトをご覧あれ!

■嫌われているということは、目立っているということや

■悲しい話は夜するな。つらい話も昼にすれば何ということもない。

■通知表は、0じゃなければええ。1とか2を足していけば5になる!

■葬式は悲しむな。丁度よかった、しおどきだった

■人がこけたら笑え。自分がこけたらもっと笑え。人はみんなこっけいだから。

■生きていることが面白い。なりふりかまうより、工夫してみろ。

■人に気づかれないのが本当の優しさ、本当の親切。

■ケチは最低!節約は天才!

■「暑い」「寒い」と、うるさく言うな。夏は冬に感謝し、冬は夏に感謝しんしゃい。

■時計が左に回ったら、壊れたと思って捨てられる。人間も昔を振り返らず、前へ前へと進め!

■世の中には、病気で死にたくない人がいっぱいおるのに、自殺なんて贅沢だ。

■今のうちに貧乏しておけ!金持ちになったら、旅行へ行ったり、寿司食ったり、着物を仕立てたり、忙しか。

 

【追記】11月21日に映画「佐賀のがばいばあちゃん」のDVDが出るので、早速買って観てみよ~っと!